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図工(こうさく)
美術家/京都芸術大学こども芸術学科専任講師
樋口健介先生に聞きました
絵を描いたり、粘土をこねたり、紙を折ったり切ったり。自由に考えて楽しめる図画や工作は、探求心や発想力、創造力など子どもの成長に必要な力を育む出発点の一つになります。同時に、つくることや、作品を通してコミュニケーションが広がるツールとしても重要な役割を果たしています。子どもたちとのワークショップなどを通して幼児の造形表現を研究している樋口健介先生に詳しく伺いました。
子どもは、体と心の発達に合わせて創作の幅がどんどん広がっていきます。線を殴り書きすることからはじまり、腕や指先の運動能力の発達に伴い、2歳半くらいから丸を描けるようになるそうです。
「丸を描くには運動能力と目(=脳)を連動させることが必要で、実はとても難しい行為なんです。丸を描けるようになると子ども自身が描いたものに意味をつけられるようになり、言葉もどんどん生まれます。4~5歳くらいになると自分以外の他者との関係が増えるので、それが絵にも反映されるようにもなります。言葉と体が成長し、表現の幅もさらに広がります」
図画や工作には子どもの感じる・考える世界が表現されます。そのため、言葉が確立していない幼児期や、気持ちをうまく言葉で表せない場合でも絵を通してコミュニケーションを広げることができるのです。
特に幼児期は、ペンやクレヨン、色鉛筆や絵の具など使い心地の異なるものを使ったり、押すと形が変わることが体感できる粘土遊びをしてみたり、触感や質感を手全体で感じることがたいせつだそう。ただ、幼稚園や保育園では楽しんでいても、家では興味を示さない時にはどうしたら良いのでしょう。
「サイズが大きい・数が多いなどの非日常的なものって、子どもも大人もワクワクしますよね。大きな紙や子どもが入るくらいの段ボール箱、色や素材の違う紙をたくさん準備してみてください。壁一面に紙を貼ったり、段ボールに色を塗ったり。ただし、図画や工作は楽しむものですので無理強いはさせないこと。親自身がおもしろそうだなと思うことをやってみるのが一番です!もちろん、親も無理しすぎずに全力で楽しんでください(笑)」
さらに、道具だけでなく、木や花、虫や動物など身近な自然にもおもしろさや美しさがあふれています。身近な公園などで遊ぶことが、さらに“つくってみたい!”という気持ちを刺激してくれます。
「子どもの“つくりたい!”という気持ちが何より大事です。親ができることは、図画や工作を楽しめる環境をつくってあげること。手を動かしたり絵を描いたりすることは、発想力や表現力、工夫する力などを育ますが、未就学のころはつくるものに意味を見出し過ぎず、親子で楽しむことが自由に創作する秘けつです。そして、子どもの作品をおもしろがってどんどん褒めて、認めてあげてください。ママやパパに認められることが子どもの自信となり、さらなる成長へとつながります」
子どもは成長とともに、自分の内と外(自分と自分以外)という意識が芽生え大きくなっていきます。自分の内と外を含めた世界を自由に捉えて、自分なりにおもしろいと思える部分を見いだせるのが図画や工作、つまりは美術の良さ。それはさまざまな人が自身の興味や関心、好奇心を探究して、多種多様な手法を用いて表現したもので、正解も不正解もありません。あるのは、それぞれの考え方やものの見方です。樋口先生は、それを自分だけの”萌えポイント”と表現します。
「“萌えポイント”とは、誰が何と言おうと、“これが好き!”という強い気持ちのこと。自分だけの“萌えポイント”を追求することができる子どもは、美術以外でも、興味や関心を深く掘り下げて自分自身で深く学ぼうという気持ちや、自分なりの答えを見つけようとすること、そして、新しいことに挑戦するという探究心や好奇心が育まれます。何が“萌えポイント”になるかは、子どもそれぞれ。図画や工作などを通じて、日々の生活で出会う魅力的な経験や日常の一コマをたいせつにしながら、親子で萌えのタネを探してみてください!」
美術家/京都芸術大学こども芸術学科専任講師
第52回昭和会展東京海上日動賞(2017)、第69回二紀展二紀賞(2015)を受賞。天童アートロードプロジェクト(山形県天童市)の企画、運営をはじめ、住民参加型の展覧会の開催や地域と連携したワークショップを行う。また、障がいの有無に関わらず多様な人が気軽に参加できる造形ワークショップを各地で開催している。