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国語(もじ・ことば)
言語心理学者
内田伸子先生に聞きました
“国語力”とは、会話や読み書きなどのツールとしての役割はもちろん、考える力でもあります。それはさまざまな分野の勉強にも関わります。そんな国語力を育むためにママ&パパが知っておきたいことを、言語心理学者の内田伸子先生に聞きました!
小学校に入学すると子どもたちは国語を教科として学びます。国語のテストで点数が低いとがっかりしてしまうママやパパもいるかもしれません。でも、国語は急に勉強したからといって得意になる科目ではないそうです。
「国語とは母国語のことです。会話などのツールとしてだけではなく、映画を観て感想を考えたり、論文を書いたり、思考や想像などに使われますよね。それは、人が生き抜くうえで重要な力になります。実は幼児期の土台づくりがとても重要なんです。将来の国語力の発達に大きく影響します」と、内田伸子先生。
「幼児期にたいせつなのは、目・耳・鼻・舌・皮膚の五官を使う体験です。外界にはたらきかけるさまざまな体験が、将来、言葉につながってきます」
ふだん私たちは、国語とひと言で言っていますが、言葉には大きく分けて2種類あります。「心理学者のジム・カミンズは、BICS(ビックス)とCALP(カルプ)※という2つの概念を提唱しました。BICSは、日常会話を話すスキルのことで、CALPは考える力、読解力のことです」
幼児期のお子さんのいるママは、「うちの子ども、周りと比べて言葉が少ないかしら…」などと、BICSばかりを気にされる方が多いかもしれませんが、国語力を育てるためにはCALPを見過ごしてはいけません。
ここで、おもしろい研究をご紹介しましょう。彼は日本からカナダに移住した子ども80名に対して、BICSとCALPの力の推移を10年間にわたり調査しました。そこでわかったのは、会話のスキルであるBICSは2年ほどで習得できるのに対し、読解力であるCALPは、習慣までに8年ほどかかるということ。しかも、3~5歳でカナダへ移住した子どもたちに比べ、母国語のCALPが確立した10~12歳に移住した子どもたちの方が学業成績が優秀だという結果も判明しました。
「読解力や思考力の基盤となるCALPは、総合的な学力にも影響します。じっくり学び、やっと10~12歳で自分のものとなるのです。小学校では、いろいろな体験をし、母国語を少しずつ耕していきましょう」
では、小学校入学前の準備として、幼児期にママ&パパは何をすればいいのでしょう。
「幼児期には、まだBICSやCALPという枝分かれはしていません。すべての国語力の土台となる力を育む時期です。この時期は、会話を通して楽しくやりとりする中で言葉がどんどん身についていきます」
まだお話ができないお子さんにも、どんどん語りかけてあげましょう。楽しい気分の時は記憶力や学習能力が高まると言われています。親は、子どもが楽しむ時間をつくり、見守ることがポイントです。
「決してやってはいけないのは、“教える”こと。ママやパパは先生ではありません。文字の読み書きは小学校に入ってからでOKです。教えると逆に変なクセがついたり、つまらない気分にさせて、成長を妨げてしまうことにもつながります」
絵本の読み聞かせをはじめ、バラエティに富んだ音や質感を楽しめるおもちゃなど、親子のコミュニケーションを生み出す遊びが理想的。子どものペースに合わせて、親も一緒に体験し、楽しむことで言葉の土台はどんどんつくられます。そして、それが花開くのが小学校高学年ごろ。じっくり育む心構えで、お子さんの国語力を見守っていきましょう。
BICS:Basic Interpersonal Communicative Skills
CALP:Cognitive Academic Language Profiency
順天堂大学国際教養部非常勤講師
IPU・環太平洋大学教授など
発達心理学、言語心理学、認知学、保育学を研究。NHK『おかあさんといっしょ』の番組開発や『子どもチャレンジ』(ベネッセ)のしまじろうパペットの開発なども担当。『想像⼒―⼈間⼒の源をさぐる』(春秋社)、『AIに負けない⼦育て』(ジ・アーズ教育新社・2020年秋刊行予定)など著書多数。