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玉川大学教育学部教授大豆生田啓友先生

玉川大学教育学部教授
大豆生田啓友先生に聞きました

近ごろよく耳にするけど、どんな能力?教えて、大豆生田先生!
「非認知能力」を育む遊び方【前編】

今の教育のトレンドは、ひと昔前の暗記型から「生きていく力を育む」方向へとシフトしています。そんな中、幼児教育でも注目されているのが、「非認知能力」。言葉は聞いたことはあっても、詳しく知らないママ&パパも多いのではないでしょうか。そこで、乳幼児教育学の専門家である大豆生田啓友先生に「非認知能力」について前編・後編の2回に分けて分かりやすく教えてもらいました。前編では「非認知能力」を育むうえで大切なポイントを、後編ではおすすめの遊びもご紹介します。

「認知能力」と「非認知能力」の違いって何?

「非認知能力」とはそもそも何のことでしょうか。

非認知能力とは、OECD(経済協力開発機構)によると、『目標の達成』『他者との協働』『情動の制御』のことで、心や社会性に関する能力です。具体的には、何かをやりぬこうとする力や自分の気持ちをコントロールできること、自分を大事に思えること、人とうまく関わる力などを指します。目に見えず、数値化しにくいため昔はあまり重要視されていませんでしたが、ここ10年ぐらいでとても重要な能力だと注目され出しました」

では、「非認知能力」に対して「認知能力」とはどうのような能力なのでしょうか。

認知能力とは、知識、思考、経験を獲得する能力のことです。簡単に言えば、読み・書き・計算など、暗記型の試験などで必要とされるスキルです。昔は、一般家庭の教育で数値化しやすく結果がわかりやすい認知能力が優先されてきました。でも、実際は意欲や好奇心など非認知能力を持つことで認知能力もグングンと育ちます。そのため、今はどちらか一方を伸ばせばよいのではなく、乳幼児期は非認知能力を重視しながら、そのうえで認知能力を育てていくのが大事だと考えられています」

将来に良いこといっぱい!「あと伸びする力」

小学校以降の教育現場で最近注目されている「非認知能力」。実際、「非認知能力」を幼児期に育むことで、子どもにどのような影響があるのでしょうか?

「アメリカの研究では、非認知能力が育まれた幼児は高校卒業率や40歳時点での収入、持ち家率の高さなどで高い成果を得ているという結果が出ています。乳幼児期に非認知能力を育むことが、大人になってからの幸福度、経済力にまで影響を与えるほど重要だと研究でわかっているのです」

生きていくうえで、重要な力となる資質を含んでいる「非認知能力」。乳幼児期から育みたい能力ですが、残念ながらその成果はすぐにはわかりません。

成長してから発揮されることから“あと伸びする力”と言われます。実際、非認知能力は今の子どもたちが大人になるころ、ますます必要とされるはずです。答えが簡単にでないような問いに対して試行錯誤する力が求められ、これまでのような暗記型の知識だけというのはあまり必要とされなくなるでしょう。AIが普及し、職業の在り方も変わってきます。そうした社会の動きのなかで、非認知能力は世界中から今、注目を集めているんです」

「非認知能力」をどうやって伸ばせばいいの?

子どもたちの将来に素晴らしい影響を与えてくれる「非認知能力」。どうしたら育つのでしょうか?

大事なのは、子どもが1日1日を充実して過ごすこと。親自身もそれを一緒に楽しむことです。これをしたから、非認知能力が伸びるという図式はありません。今続けていることが、おのずとより良い未来をつくり出すのです」

第一にたいせつなことは、大人に愛されて無条件に受け入れられることです。具体的には、泣いている子どもを抱っこしたり、共感する言葉を投げかけたり、その子らしさを大人が温かく受け止めてあげること。「非認知能力」を育むために、「見守る」「認める」「褒める」など、ママとパパが普段あたり前のようにやっていることが、重要なのだそう。

もうひとつの大事な要素が“遊び”です。夢中で遊ぶことは豊かな学びになります。お絵描き、積み木、ブロック、水遊びなど、その子が好きな遊びを徹底してやれる環境を大人がつくってあげることがポイントです。ひとりひとりタイプが全然違うので、周りと比べず、その子に合う遊びを、その子のペースでやらせてあげましょう」

後編では、「非認知能力」を育てるうえでおすすめの遊びのコツをご紹介します!

玉川大学教育学部教授/大豆生田啓友先生

大豆生田啓友先生

玉川大学教育学部教授

専門は、乳幼児教育学・子育て支援。日本保育学会副会長、厚生労働省「保育の質の確保・向上に関する検討会」委員(座長代理)、こども環境学会理事。NHK Eテレ「すくすく子育て」をはじめ、テレビ出演や講演活動など幅広く活躍中。『マメ先生が伝える 幸せ子育てのコツ』(赤ちゃんとママ社)ほか、著書多数。奥様である、臨床心理士の大豆生田千夏先生との共著に『非認知能力を育てる あそびのレシピ』(講談社)もある。

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